ドキュメンタリー「ボードゲームデザイナーズ」制作にあたり、uoon、さとーふぁみりあ、HLKT工房の3サークルには3回のインタビューを行いました。
今回は、uoonへの第1回インタビューの文字起こしを公開いたします。
この時期のuoonは、ゲームマーケット2023春で「いきなりクライマックス」「定時なんで帰ります。」の2作品を発表した直後でした。
- 自己紹介
- ゲームマーケット2023春の作品
- ボードゲーム制作を始めたきっかけ
- ゲームマーケット2023での苦労
- ゲームマーケット2023春の反響
- これから作るゲームについて
- ゲームの制作過程
- ゲームマーケット以外のイベントは?
- ウチ来いよ 元気出るぞ
- 他の制作者との交流は?
- ゲームマーケット2023秋の抱負
自己紹介
- まず最初に自己紹介をお願いします。
ノウトミ:まずはサークルの名前から。
サークル名uoonと申します。
アルファベット小文字でu、o、o、nって書いてuoonです。
- 叫び声みたいですね。
ノウトミ:意味合いとしては確かに何か「うおーん」ってっていう叫び声みたいな意味なんで。
櫻井:そこもっと掘らなくていいの?uoonとは何かって。
ノウトミ:(笑)
- 次はお二人のお名前と担当をお願いします。
ノウトミ:僕がノウトミと申しまして、全体的な企画、どういうゲームにしていくかっていう企画とかルール作りをやっています。
もろもろのイラストは彼(櫻井)にやってもらってるんですけど、その他のデザインみたいなところを担当しています。
櫻井:シュウマイと申します。中華料理のシュウマイですね。(2023年春当時のペンネーム。のちに櫻井修磨に変更)
彼が色々考えてくれるゲームをですね、これを書け、あれを書けという風に指示をいただいてイラストを描いています。
その他にも一緒にゲームを考えて、ノウトミの「こんなゲームどうかな?」に対して茶々を入れたりとか、そんな感じにして作っています。
イラストレーター兼アドバイザーみたいな感じですね。偉そうだな(笑)。
- uoonにはもう一人メンバーがいるとお聞きしましたが。
ノウトミ:もう一人はかなりバックオフィスというとあれなんですけど、裏方で、まだ作り途中なんですけど、ウェブサイトを作るであったりとか、基本的にはゲームのルールに問題ないかみたいなちょっと頭を使う系のところとかを担当してもらってたり、僕らの間で意見がまっぷたつに割れちゃった時に最後にアドバイスをもらう役割として一人います。
- uoonの活動開始時期は?
ノウトミ:ゲムマ2023春の申し込みの締め切りの頃、去年の12月ぐらいからがスタートですね。
ー それから半年足らずの間に2作品を作った。
ノウトミ:申し込みからしばらく温めに温めたところがあるので、実際には多分3月から活動がしっかり始まって、6月のゲムマに2作品持ってたっていう感じですね。
ゲームマーケット2023春の作品
- ゲームマーケット2023春に出したゲームについてご紹介をお願いします。
ノウトミ:この2つ、「いきなりクライマックス」というゲームと「定時なんで帰ります。」っていう2作品を作りました。
どちらも基本的には二人用のカードゲームです。
できた順番に、まずこの「いきなりクライマックス」っていうゲームを説明します。
「いきなりクライマックス」のコンセプトっていうところを言うと、カードゲームを題材にしたアニメみたいな。
「遊戯王」であったりとか、「デュエルマスターズ」みたいなアニメって何かめちゃめちゃカッコいいじゃないですか。
セリフとかが、「俺のターン、ドロー!」って言ってカードを引く、で、技の名前を叫びながらカードを出して戦い合っていくみたいな。
僕はトレーディングカードゲームが結構好きでいろいろやってたんですけど、どうしても人と一緒にやるにはハードルが高いというか、あんまり頭を使いたくないなっていう人とかとやると、なかなか楽しめないみたいなところも結構あるんで、気軽にそういう熱い戦いみたいなのを再現できないかなって思って作りました。
基本的にはセリフの応酬で戦うカードゲームっていうのを作りたくて作ってます。
こういう「この世界をお前の好きにはさせない」とかの、いかにも主人公っぽいセリフだったりとか、「なんかお前強いんだな。ワクワクしてきたぜ」みたいなカードがあります。
これをプレーヤーの人にはもうこのセリフだけまず見てもらって、もう好きなセリフ、今言いたいセリフ、今言うべきセリフこれなんじゃないかっていうので、カードを出してもらうとでそうするんですね。
で、このセリフカードを裏返すと中に効果が書いてありますと。
で、ここからはトレーディングカードゲームみたく、このカードを出したら山札からもう1枚ドローするだとか、相手の何かを捨て札にするみたいな能力が発動されるんですけど、そうやって、基本的にはセリフを見てもらって、その後で効果が付いてきて、ゲームに自然となっていくみたいなものをちょっと作れないかなっていうところで、セリフの掛け合いをすごく楽しんでもらえたらいいなというゲームを作ってみました。
ー もう一つの「定時なんで帰ります。」はどんなゲームですか?
櫻井:もう一つのゲームなんですけども、こちらは「定時なんで帰ります。」っていうゲームですね。
さっきの「いきなりクライマックス」は割と感覚的なゲームだったかなと思うんですけども、こちらはどちらかというと、もう少し心理戦寄りなゲームになっております。
パッケージにあるこの女の子、無能部下バーサスこのでっぷりとしたパワハラ上司、この2つの構図で戦ってく、一対一の二人用のカードゲームですね。
細かいルールの話をすると、それぞれ4つのターンを戦ってそれぞれのターンで得点がゲットできて、最後一番得点が高かった人が勝ちのゲームなんですけれども、基本的にカードがパワハラ上司側と無能部下側に分かれていて、それぞれのデッキがあるんですけども、それぞれのカードに数字が書いてあって、それぞれ大きいカードを出し合ってくゲームなんですけども、このカードゲームの一番の特徴が何かというとですね、その4ターンの毎ターン毎ターン毎にそのターンの勝利条件を決めるカードをセットして、それで戦うんですね。
なので、例えば自分がセットしたカード、最後に一番大きい数を置いて勝ちたい、そうすることで得点が多くもらえるカード。そういう勝利条件のカードをセットしてるかもしれないし、ただ同時に相手は低い数字で早々に負けるとポジティブなカードを捨ててるかもしれない。
そういったカードを、自分も相手も同じ合計4種類の勝利条件を決めるカードを持っていて、それぞれのターンにこう伏せ合って戦っていく。
なので、一体相手は今回どういう勝利条件のカードを伏せているのかな、自分はそれに勝つためにじゃあこういう勝利条件のカードを伏せよう。
そういう風に相手の出方をうかがって戦っていく、そんなゲームになっています。
ノウトミ:心理戦要素のある大富豪みたいな。
櫻井:ああそうです。
まあ「定時なんで帰ります。」とありますけども、基本的に構図は定時で帰りたい無能部下、別に定時で帰る人が無能とは言ってませんよ、バーサス、パワハラ上司、パワハラ上司はいけないですよね、で分かれていて、例えばパワハラ上司のカードのセリフにはですね、例えば、皆さんも言われたことないですか?「もういいや、俺がやるよ」とか、逆に無能部下のセリフには、それこそタイトルにもなっている「定時なんで今日は帰ります」みたいな、そういうセリフをお互い言い合って掛け合ってやってくっていうそういう面白さもあるゲームになります。
ボードゲーム制作を始めたきっかけ
- ボードゲーム制作を始めたきっかけを教えていただけますでしょうか?
ノウトミ:元々僕らは結構物を作っていくみたいな創作活動が好きで、本当に小さい趣味として、もうお金も全く発生しないようなところで、例えばちっちゃな映画っぽいものを作ってみたりとか、そういうことはやっていたんですね。
ただ社会人になって、自由に使えるお金も増えてきたので、もう少し規模が大きくできるんじゃないかなとかは思うんですけど、どうしても働いている中で忙しいを言い訳にしてだらだらして結局作らなくて家でゲームしてるみたいな、若干僕達視点で行くと怠惰な生活を送りつつあったところで、モノを作りたいと思い立った。
で、ボードゲーム、彼(櫻井)はそこまでボードゲームに関わってないんですけど、僕がかなりボードゲームとか好きで、本当にイエローサブマリンとか行って買うような同人系のボードゲームとかも好きだったので、ボードゲームを作ってみたいな、ゲームマーケット出してみたいなっていう元々の思いから、ちゃんと締め切りを用意するっていうところで、ゲームマーケットに申し込んでみよう、僕たちはいろいろ作りたいものはあるけど、一旦ボードゲームを作りきろうっていうところで始めたのが一番のきっかけになります。
- ボードゲームを作る前はどんなものを作っていましたか?
ノウトミ:過去に映画だったりとか、あと本当にYouTubeをちょっとかじった時もありまして、1週間に1本ゲームを作ってそのゲームをプレイするっていう、もう自分で作って自分達で実況動画をあげるみたいなことをやってて、パソコンでやるRPGゲームみたいなものだったりとか、それこそ今回出した「いきなりクライマックス」の元になるカードゲームを作ったりだとか、そういったことを結構やってましたね。
ゲームマーケット2023での苦労
- ゲームマーケット2023春に出展する上で苦労したことは?
ノウトミ:ボードゲームを作ることに関して何も知識がなかったし、ゲームマーケットにも買う側としても参加したことがなかったので、本当に知らないことだらけだったっていうのが、本当に苦労のポイントです。
櫻井:もしスケジュール半年前から準備していたら、分からないことを調べて「あ、こうなんだ、じゃこうすればいいね」って多分スムーズにいったけど。
ノウトミ:一番苦労したというかつまずいたのがスタートで、印刷物を作るのってチラシとかだと本当に1日あれば印刷してもらえるみたいなのがある。
その感覚でボードゲームを作ろうとしていたのが一番の間違い。
それに気付いたのがゲームマーケット3カ月前でだいぶ焦りましたね。
- そこからどうやって完成までこぎつけましたか?
ノウトミ:一番最初、印刷会社を調べたときに「あ、やばい、これスケジュール全然ダメだ」みたいな。
確か萬印堂さんが一番多分大手だと思うんですけど、萬印堂さんのウェブサイトの一番最初に「ゲームマーケットの締め切り、一部まだあります」。
一部だけ、基本的に大きいものに関してはもう締め切り終わってます、一部細かいものに関しては明日明後日くらいまで受け付けてますよ、みたいな記載があって、「あ終わった、やべえじゃん」みたいなことを気付いたのが一番のスタートですね。
それでブログのネタの一つになったねみたいな話を多分櫻井がして、一旦Twitterとブログを始めたんですよ。
もう何もなく広報活動を先に始めるっていう。
Twitterでそういうヤバい状況です、みたいなこと言ったら、いろんな方々からすごいアドバイスをいただけて。
櫻井:優しいね。
ノウトミ:本当にいろんなアドバイスをいただけて、実際にはまだまだ間に合う印刷業者さんもあるよだったりとか、最終的に僕らは名刺印刷、ラクスルさんとか大手のところで名刺印刷にしたら、最短4日でカードができるし、お金をちゃんとかければ1日でカードができあがるみたいなもので、何とかできそうだぞ、と。
パッケージに関しても別のパッケージを専門にやってる会社さんに2つ電話をかけたんですけど、1週間後ぐらいまでにデータ入稿があれば全然間に合いますよっていう話をいただけたので、「あ、何とか作れそうだぞ」っていう感じで、ようやく完成の目処というか、一旦作れそうっていうのが分かってきてたっていう感じですね。
ゲームマーケット2023春の反響
- 2作品のゲームマーケットでの反響は?
ノウトミ:僕たちは前日に何部売れるか予想しようぜって。
櫻井:橋の上で歩きながら話して。
ノウトミ:何部って言ったっけ?
櫻井:40何部。
ノウトミ:彼が一番多くて40何部、全部で200部あるんですけどね。
200部作りました、で40何部。
僕らは30部売れたらいいんじゃないみたいなって言ってた。
当時、ありがたいことに予約をいただけて、10何個か予約がもう決まってたんで、じゃあその倍ぐらいじゃない?みたいなことを思っていたら、最終的に200全部っていうわけにはいかなかったけど、当日持って行って売ることができるものは、全部なんとか売れましたね、おかげさまで。
櫻井:友達がLINEで送ってくれたのは、「このゲームのルール、ここをこうしたら良かったんじゃないか?」みたいな。
ノウトミ:それを読んで、「なるほどなー」って。
櫻井:僕は終わった後ずっと、「いきなりクライマックス」と「定時なんで帰ります。」とか、あとゲムマ戦利品とかですごい調べてて、僕らの見積もりが低すぎたのかも知れないですけど、意外とその戦利品とかのところに載ってるのを見ると、やっぱすごいめちゃめちゃ嬉しくなりましたね。
ノウトミ:僕は怖くて調べられなかった。
櫻井:あと当日買いに来てくれた人に対してで、何が理由で買ったんですかっていう質問をしたんですけど、すごいうれしいことに、カードのデザインがいいですよねとか、このパッケージが何かすごいオシャレだなと思って買いましたとか。
当然、試遊はできなかったので、ガワで判断するのが当たり前なんですけども、やっぱりそのガワをすぐ褒めてもらえたっていうのがもうありがたいし嬉しいなと思いましたね。
- 確かにイラストは印象的でしたね。
櫻井:ありがとうございます。
僕はイラストを元々趣味でたまに描いてたんですけども、それを人に見せる機会っていうのがあんまりない、人に見せたとしても、それこそ横にいるノウトミとか、そのくらいしか別に見せる機会がない。
そもそも、思えば何かのためにイラストを描くっていう目的がなかったので、別にそこまでして継続した考えとかはなくて、バストアップをシャシャシャって何も難しくない落書きを描いて、「ふぅ、何か疲れたからお風呂入ってこよう」みたいな、要は本当にそれがもうただの趣味だった。
けど、このゲムマに参加する、そこに向けてその作品に使うイラストを描く、で、そのイラストは何があるといいから、これをいついつまでに描いてくれっていうのがあると、自分の中でも自分の絵で売れなかったなんていやだからと頑張るかみたいなところがある。
で、普段なら描かないような構図、例えば迫力を出すためにこの構図は下からのアオリ、みたいな、普段一人でやってたら描かないものとかをチャレンジしていく中で、自分としてもそこでを使えた感じがしますし、それが褒められると、もう第三者に絵を褒められる機会なんてなかったので、そこはすごい嬉しかったですし、ああいいなと思いましたね。
ノウトミ:意外と皆さんちゃんと見てくださってるなっていうのは本当にありがたかったですね。
本当にブログを読んでくださった方で、何か本当にどうなってるか、ちょっと皆さんを不安にさせるブログであったので、どうなってるか気になって見に来てくださって買ってくださる方もいらっしゃれば、本当にもうこのイラストをめっちゃ好きですみたいな風に言ってくださる方もいる。
櫻井:「『定時なんで帰ります。』のパッケージの女の子がいいなぁと思って胸を見たら、次にお尻に視線を誘導して、最後にこの奥の人のでっぷりとしたお腹にいくの、これは計算されてますね」とコメントをいただいた時、「いや考えてなかったな」と思いつつも、「あ、ちゃんとそこまで見てくれるんだ」。
要はぱっと一枚絵の印象だけじゃなくて、しっかりそんな風に見てくれてるんだなっていうのが、もう何かそれだけですごい励みになりましたね。
ノウトミ:確実に初心者サークルなんで、もう本当に見てもらえてるっていうことが分かってるだけで超嬉しいところがありましたね。
これから作るゲームについて
- これから作るゲームについて考えていることはありますか?
ノウトミ:2023年秋については、今アイデア出しを行っているというところですので、制作に入っているというわけではないです。
方針というか、基本的にやりたいこととしては、uoonの中で僕はボードゲームがそこそこ好きでありながら、他の二人がそこまでボードゲームに触れていないっていうところがあって、ただそれが全然欠点ではないと思っていて、僕もそんなにボードゲームが好きな人が周りにいたタイプではないので、そういう初心者の人も上級者の人も一緒になって盛り上がれるもの、今回もコンセプトとしてはあったんですけど、そういうのを継続的に作っていきたいなっていうのがあります。
あと、もう一つはバカっぽいものがいい、あんまり頭使わずに盛り上がれるみたいなところがいい、そういうのが元々自分で作りたいものではあるので、それを作っていきたいなっていうところです。
春からちょっとアップデートしたいなっていうところで行くと、それこそさっきあったみたいにTwitterとかで「こうした方が面白いんじゃないか」みたいなご意見をいただけることは確かにありがたいんですけど、それは売った者としては申し訳ないなという気持ちもあるので、まずはゲーム性をもう少し高いものにしていきたいなっていうクオリティアップのところもありますし、めていただいたデザインとかイラストのところはもっともっと唯一無二というか。
櫻井:レベルを上げるべく、昨日も一昨日も合計24時間ぐらい描いてますので、秋に向けて必死に練習してます。
ノウトミ:っていうところで、強みとは言えるか分からないんですけど、皆様に褒めていただいたところをしっかり伸ばしていきたいなっていうところが強くあります。
ゲームの制作過程
- ゲームを作るときに心掛けていることは?
ノウトミ:心掛けていることとしては、とにかく誰でも楽しめるっていうと語弊あるかもしれないですけど、ゲーム得意な人、ゲームのルールの把握が速い人とゲームのルールの把握が遅かったりとか、遊び方をすぐに見つけられない人の両者が楽しめるみたいなゲームを作りたいなと思ってます。
ボードゲームが好きなので、でもボードゲームは一緒にやってくれる人がいないと成り立たないものが多いじゃないですか。一人用ゲームもあるんですけど。
ってなったときに、次にボードゲームをやってみたいなって思えるような、最初にめっちゃボロ負けするようなゲームもいやだし、逆に言えば接待プレイで勝っちゃったゲームも何かモヤモヤが残るだろうなと思うので、最初は本当にワイワイ楽しむことができる、いろんな人のボードゲームのきっかけになるようなゲームを作れればいいなと思っているのが一つですね。
で、もう一つがデザインにこだわって作ろうとしてますね。
デザインとして何がっていうわけではないんですけど、ボードゲームに出会った高校生の頃の僕個人の考え方ではあるんですけど、せっかくそこそこするお金で買ったボードゲームなら、遊ぶのが楽しいのは当然なんですけど、やっぱり何かこうカードだけ見ても楽しかったりとか、他の人がやってるのを見てとか、出来上がった盤面を見た時になんかこう素敵だなって思える、このゲームは単純に面白そうだなって思えるところがあると嬉しいというか、すっごいテンションが上がる。
で、その見た目のところで、デザインっていうのはなるべくカッコよくなるといいなと思っています。
なので、それこそ「定時なんで帰ります。」とか、「いきなりクライマックス」にしても、本当はというか、理想を言えば、タイトルを目立たせたりとか、もうちょっとゲーム性が分かるようなものが好ましいんだろうなとは思いつつ、どちらかというと自分たちが棚に置くにあたってこっちの方がいいなって思えるものとか、格好いいものっていうのを作っていきたいなと思ってやっています。
櫻井:ノウトミは特にデザインにすごいこだわりがありまして、どういうバックグラウンドがあってそんなにデザインに対しての造詣が深いんだってのは僕には分からないですけど、彼が出してきたものはすごい格好いいですし、逆に「ここをこうしたらどうなるの?」みたいに言うと、ふふって失笑されながらすごくダメ出しされる。
すごい頼もしい感じで、彼がいたからこのスタイリッシュ、スタイリッシュと言うとちょっとチープですけども、やっぱ今のようなuoonのボドゲ2種があるのかなという気はしてますね。
ノウトミ:櫻井はこう言ってますけど、「定時なんで帰ります。」の表紙作るときにはもうめちゃめちゃ「いや、何か違うんだよな」って言い続けて。
櫻井:なんか嫌なクライアントみたい。
ノウトミ:たぶん30案くらい作って、「どれがイメージに合いますか?」みたいなのをやって擦り合わせていったりもしてたんで、一概にどうということではないですね。
でも、作り方としてやっぱり自分だけが好きなものっていうよりは、いろんな人が見てやっぱ格好いいなって思ってもらえるものを作りたいんで、結構いろんな人に意見を求めたり、それこそ「いきなりクライマックス」のカードデザインは最初ブログに上げたんですよね。
こんな案で迷ってますみたいにして、それが10何人の方に「こうしたらいいんじゃないか?」「こういう考え方があるよ」って言うのをめちゃめちゃ頂いて、本当にそれでかなりブラッシュアップというか相当カードのデザインのレベルが上がったかなと思っていて、そういう本当にいろんな人の意見を聞きながら、誰が遊んでも何か格好いいなとか楽しいなって思ってもらえるデザインっていうのを作りたいなと思って頑張っています。
- アイデアを出す時の発想法などありますか?
櫻井:uoonに共通すると思うんですけど、やっぱりバカなことを真剣にやるっていうコンセプトがあると思うんですよ。
「いきなりクライマックス」も何かカッコいいカードですごい叫びながらプレイしてるっていう訳の分からないことを真剣にやるゲームです。
「定時なんでで帰ります。」も、よくよく考えたらちゃんちゃらおかしい、パワハラ上司バーサス無能部下っていう構図をうまく心理戦の真剣勝負にしたいみたいな、何かそういうくだらないことをちょっとカッコよく演出するみたいなところが何かuoonの醍醐味だと僕は勝手に思ってるんですけど。
ノウトミ:確かにアイデアのスタートというか、どういったゲームを作ろうかのスタートで行くと、本当にそういう何かはしゃいでいる、ある種内輪ノリではあるけれど、テンションが何かわかんないけど上がってて超楽しいよね、みたいな瞬間、なんかバカ騒ぎする瞬間を何かうまく再現性あるものにできないかなみたいなところが考えのスタートかもしれないです。
僕らが一回だけ旅行に行った時に盛り上がったのが、「高速ワンナイト人狼」って言って、「ワンナイト人狼」をめちゃめちゃんなスピードで回すんですよ。
だからもう途中勝ち負けどうでもいいんで、私自身もめちゃくちゃ速く回すんですけど、カードの分配が人狼がスタートから半数取ってる可能性もあるみたいな、そういうもう本当にむちゃくちゃな状況を何夜も繰り返すみたいなゲームをやってて、それが本当にとにかく面白かったんですよね。
なんかもう開けます、起きます、何かもうみんな笑い合ってて、何かとにかく議論っぽいことをするんだけど、ここ人狼が半数いるの分かってるからもう勝ち確なんだよなみたいな顔されてるみたいなんだったりとか、それを怪盗がすり替えてて、結果を見るとき「うわー、そうなの?」みたいな。
そういう変な、ルールに則ってないんだけど、馬鹿騒ぎしてる瞬間ってみんな平等に楽しいというか、やっぱ人狼だと本当に人狼を真剣にやっちゃうと、「つまらない」って言って去って行っちゃう人がいる中で、そういうわかりやすさで馬鹿騒ぎしてるっていう瞬間が面白かったな。
で、その瞬間って他に何があるだろうっていうので、そのうちの一つが「いきなりクライマックス」でいえば掛け合いというか、ちょっとハイになって格好いいセリフを言い合ってる瞬間って面白いよね、だったりとか、「定時なんで帰ります。」で言うと、もう本当に飲み会のお話の中で、こんなこと言う上司とか、それに対して自分もこう言っちゃったんだけどねとか、何かそういうところの話の共有の中での盛り上がりみたいなところから作ってるゲームなんで、馬鹿騒ぎできる瞬間をゲームにしたいみたいなところはあるかもしれないですね。
- テストプレイはどのようにやっていますか?
ノウトミ:二人で黙々とやってます。
櫻井:私の自宅で、終業時間後、私の家に集まってノウトミの終電が来るまで。
ノウトミ:テストプレイっていうと、もしかすると他のサークルさんと多少違うのかなと思うのは、盛り上がれるかで測っている気がする。
数字のロジックで勝敗が偏っちゃうよねっていうのは後回しにして、どこまで気持ちよくなる掛け合いができるかとか、やりたいことに対して合ってるかどうかっていうところです。
テストプレイを二人でやってるのは他に知り合いがいないからみたいなとこもあるんですけど。
櫻井:「いきなりクライマックス」とかはこうすると勇者側が勝っちゃうよ、魔王側が勝っちゃうよとかじゃなくて、「待てよ、この手札を引くセリフの後にこれが続くとなるとおかしくなるからちょっとここを変えないか」みたいな、ゲームシステムというよりは演出の滑らかさというか、ちゃんと盛り上がり切るかみたいなところにより主眼を置いてたような気がしてます。
両方主眼を置きなさいって話かも知れないんですけど、そういうところは明確にありました。
ゲームマーケット以外のイベントは?
- ゲームマーケット以外のイベントへの出展は検討されていますか?
ノウトミ:今んとこ検討は特にしていないです。
というのも、開発期間的に他のイベントに出る余裕がない。
ありがたいことに「再販をしないんですか?」とか「委託とかないんですか?」というお話はいただいていて、今考えてはいるんですが、やっぱりどうしても元々が赤字、趣味で作ってるゲームなんで、どんなに売っても赤字ではあった。
櫻井:赤字覚悟じゃなくて、もう約束された赤字。
ノウトミ:今のところはやっぱり作ってしまうと赤字なんで一旦控えているっていうのが現状です。
ただ、何かもう少し、ちゃんと利益が出る形で作れるようになったらっていう言い方は変ですけど、今回初めてだったんで、作り方も分からずだったんですけど、そこをうまく作れるようになったら、より多くの人に遊んでもらいたいな、それこそいい感想とかもらいたいなっていうところはあるので、まあ別のイベントに出れたらいいけど、出れるようになったらすごいねっていう感じですかね。
- 赤字についてもう少し詳しくお願いします。
櫻井:両方1,000円で売ってたんですけど、「やばいっすよ、これ」って言われましたもんね、知らない人に。
ノウトミ:当日売れないだろうって思ってたんで、抽選で当たったら1個プレゼントしますよって言うので、10個を別に確保してたんですよ。
そしたら、もう「何か信じられない」みたいに言われた。
櫻井:「何をやってんだよ」みたいなね。
ノウトミ:そんな反応をされていましたけど、そこはとにかく多くの人に遊んでもらいたいっていうところで。
ウチ来いよ 元気出るぞ
- サークルカットに「ウチ来いよ 元気出るぞ」のメッセージを入れた理由は?
ノウトミ:最初にuoonっていうサークル名を解説すると、uoonって何かって言うと、僕らの中でチャットやLINE上でuoonっていう言葉を使ってたってだけの話なんですね。
どういう時に使うかっていうと、何て言うんでしょう、どうしようもなくモヤモヤするけれど、何も言えない状況というか。
それこそ会社とかに置き換えると分かりやすいんですけど、自分が自信持って作ったものに対して、上司から正論のダメ出しが来てしまったみたいな、こんなに頑張ったのにって言いたいけど、まあ正論だし、何も言えないなっていう感情のはけ口として「うおーん」みたいな、ちょっとこう言葉にならない叫びみたいなので、魂の叫び魂を意味して使ってた言葉が元々です。
で、ボードゲームに関して言えば、「定時なんで帰ります。」が、そこをそれなりに体現をさせたものにはなるんですけど、そういう大人になって、社会人としての観点をから言えば、文句は言っちゃいけなかったりとか、言い訳をしちゃいけない場って結構あると思うんですけど、でもそれする場がないと生きるのって辛くない?みたいなのが我々の中であって、そういう意味でその叫び声をサークル名にして、もう少し明るく生きる糧になるコンテンツを作りたいなと。作れてると言うつもりは全くないんですけど。
そういったコンテンツを作りたいなって意味で、サークルカットでも、うちに来たら何かちょっと元気が出るものあるよっていう風に言いたくて。
もちろん学生さんも含めてなんですよ、何かこうコミュニケーションを取る上で嫌なことがある人達とかも多いだろうし、何か学校行くと辛いなっていう人も多いと思うんですけども、僕らが一応社会人なので、スーツを着た女の子にちょっと言わせてみた。
櫻井:最初はセーラー服を着た女の子を描いたら「リクルートスーツに書き直せ」と言われてあの子になりました。
ノウトミ:そこはちょっとこだわりかもしれないです。
やっぱり社会に出るっていう意味合いでリクルートスーツを着させています。
櫻井:最初、ネックレスを付けてたら、それも外されました。社会人なんで。
他の制作者との交流は?
- 他の制作者やサークルとの交流などはありますか?
ノウトミ:交流でいうと、Twitterでは結構いろんな方から感想をいただいたりとか、一方的になっちゃうんですけど、僕ら側も制作期間中は自分たちのを作ることに精一杯で、リプライをいただくっていう形で結構いろんな方々からアドバイスだったりとか、お褒めの言葉とかもめちゃめちゃいろんな方々から頂いたっていうところがあって。
当日は結局僕からは全然ご挨拶には行けてないのですけど、Twitterで交流のある方に来ていただいてめっちゃ感動した。
「お前らが挨拶に行けよ」って感じかもしれないですけど、本当に僕らはその時はもう無理だった。
必死に説明してたらゲムマ当日が終わっちゃったんで、なかなか落ち着いた交流ができなかったんですよね。
なので何かできればゲムマ秋とかではもう少しちゃんと他のサークルさんのを見に行きたいなっていうのがめちゃめちゃありますね。
だから今回で言えばあんまし交流できなかったなっていうところですね。
ゲームマーケット2023秋の抱負
- ゲームマーケット2023秋の抱負は?
ノウトミ:僕は企画側目線っていうところでいくと、できれば赤字が出ないようにしたいなっていうのが若干あります。
もちろんこれは趣味で作ってるんでいいんですけど、ちょっと今回と前回で意識が変わったのが、春に関してはもう赤字でもいい、作り切ったら嬉しい、買ってくれたら嬉しいだったんですけど、継続してちゃんと作りたいなっていう風に思えてきた時に、赤字だと今後がきついぞっていうのがなんとなく分かってきたんで、まあ利益が欲しいっていうところです。
ほかに関しては、先ほどもあったんですけど、デザインの部分をちゃんと尖らす、もっともっと良いものにしていくっていうところと、ゲームのクオリティー、ゲーム性ですね。
これがちょっと弱いなと思ってるところではあるので、ゲーム性はちゃんとテストプレイをいろんな人を交えてやっていくといったところで高めていけたらいいなと思います。
櫻井:彼がわりとマクロな視点になってくれたので、僕はすごい細かいところを話すけど、僕はイラストを描いてるので、やっぱり少しでも自分のイラストをいいなと思ってもらいたいとか、欲を言うとイラストのファンになってくれるような人を作れるようになりたいと思いますし、それにはその人の心を動かせるようなものを作れるようになることだなと思っています。
思ったのは、これ僕も勘違いしたんですけど、絵って何か元々上手い人がいて、その人が勝手にうまい絵を描くものだと思ったんですけど、そんなのは多分本当に限られた一部の存在で、ほとんどのイラストレーターとか絵を描く人は、絵が下手な状態から何とかして、もうそれこそフィーリングじゃなくて、俯瞰の構図では、煽りの構図では、ここがカメラ視点になってるからアイレベルがこうで、ここのものが小さく見えるはずで、みたいな、そういう本当にこまごまとしたものをどんどん積み上げていくことでしか多分絵のレベルがステップアップしないんだなってことに、僕は恥ずかしながらようやく気づきまして。
それで日々研鑽を積んでいるわけですけども、そういう小手先っぽい技術的なところもそうですし、どうやったらより魅力的なものを描けるのかというところも日々練習していて、自分のこの絵のファンを作って、それが最終的にはサークルのゲームの面白さであったりですとか、やっぱりずっと赤字だとサステナブルじゃないので、「ボドゲ買いたい」みたいなところに繋がるように、僕は自分のスキルをアップしていきたいなと思っております。期待してます。
- 今後の活躍を楽しみにしております。ありがとうございました。
uoonのXアカウントはこちらです。
ドキュメンタリー「ボードゲームデザイナーズ」前後編はVimeo OTTで公開中です(有料)。
https://sugorokukozo.vhx.tv/products
前編の序盤の約10分をYouTubeで無料公開しています。
特別編の「ボードゲームデザイナーを目指す人々への言葉」も公開しています。